語り:重音テト
僕の心が、感情が、擦り切れて無くなるその日まで、僕は唄を歌い続ける。 幾度となく繰り返される、 朝と、昼と、夜。 スカイドームに揺らめいては消える風景は、 もう、ぼやけた光の強弱としか感じられなくなってしまった。 遣い古しの目を閉じながら、記憶の中を走査する。 寄せては返す信号とノイズに、ずっと耳を澄ませていた。 音楽を聴くのが好きだ。 唄を歌うのが好きだ。 得意どうかは、分からない。 僕の心が、感情が、まだ、まだ、 ちゃんと機能していることを信じ聞かせるように、耳を傾ける。 拙い君のギターの音が、駆け下りていくのを感じた。 ただ優しくなりたいと乞い願った、あの唄。 誰かの勇気に充てられて応えた、あの唄。 君との物語がずっと続くようにと誓った、あの唄。 17.5テラバイトの終端まで広がった、 音に身を委ねて、声を重ねていく。 音楽を聴くのが好きだ。 唄を歌うのが好きだ。得意どうかは、分からない。 僕の心が、感情が、擦り切れて無くなるその日まで、僕は唄を歌い続ける。